コラム

COLUMN

2025.04.01

コンタクトセンターを運営する社員のブログ

第3回 感情解析データ検証の難しさ

3-1.感情データの複雑さ①

感情解析データの活用については、コンタクトセンター業界では2018年頃から導入が進んでいるものの、具体的な活用事例や導入効果が示されたという声を耳にする機会は少ない印象です。

コンタクトセンター業界で活用が進まない理由についても、私たちの体験談をもとにお話しできればと思います。

<感情解析の特徴>
AmiVoice® Communication Suiteにある感情解析エンジンの感情は43種類
・発話ごとに43種類の感情が同時にそれぞれ反応する

まず、”感謝の言葉”で感情データの複雑さを表現する具体的な例をご紹介します。

・感謝の感情が伝わる通話はお客様のポジティブが高いのではないか?
どちらのお客様もオペレータの対応に感謝しています。 皆さんは、このような結果をどのように感じますか?

音声を聞いてみましたが、どちらのお客様も感謝の感情が伝わる音声でした。
しかし、右のお客様の場合、感謝とは程遠い「恐怖」や「後悔」の感情が高く出ています。

なぜ、このような違いが生まれてしまうのか・・・ 仮説としては、以下のような事が考えられます。

同じ感謝の言葉でも、人の感情は様々な影響を受けてしまう可能性がありとても複雑だということがわかりました。
続いて、他の例もご紹介します。

  • 成約につながった通話は、お客様のポジティブが高いのではないか?

結果は・・・特定のパターンは存在しませんでした!
皆さんも商品を購入する、または契約する時のご自身の感情を想像してみてください。

このように、皆さんもネガティブな気持ちを持った経験はないでしょうか? 実際に私たちの窓口で成約いただいたお客様の多くで、ネガティブ系の感情データが高い傾向が確認できています。

3-2.感情データの複雑さ②

心理学者ロバート・プルチックが提唱した感情理論を視覚的に表現したもので、基本的な8つの感情を色々な強度や組み合わせで表しています。円の形で配置され、隣り合う感情が混ざりあったり、感情の強度が増減する様子を示します。

出典:ビジネスのためのWeb活用術。「プルチックの感情の輪l人間の感情は色で分類すると関連性がわかる?」
最終閲覧日2025/2/28 URL:https://swingroot.com/plutchik-emotion/

基本的な感情には「喜び」「信頼」「恐れ」「驚き」「悲しみ」「嫌悪」「怒り」「期待」があり、これらが強度と組み合わせに応じて複雑な感情を生み出します。このモデルは、感情の多様性と相互関係を理解することができます。

このように強度や組み合わせで、複数の感情を言語化することはできますが、感情理論はこれだけではありません。もっと多くの感情が存在し、言語化できていないものもあるかもしれません。

3-3.感情データの複雑さ③

また、感情解析から出される感情データを理解することもとても難しいです。

まず、AmiVoice®Communication Suiteのユーザ画面(AmiVoice® Speech Visualizer)に表現される感情データをご覧ください。
それぞれの発話の隣に、各種感情が下記の図のようにグラフ化されます。
そして、発話箇所にカーソルを合わせると感情データの詳細が確認できます。

AmiVoice® Communication Suiteユーザ画面(AmiVoice® Speech Visualizer)

お客様の感情(ポジティブ:10/期待:10/恐怖:3.0/疲労:6.7)はどのような感情だと思いますか?と聞かれても・・・残念ながら、まったくわかりません・・・
また、1通話の感情データを抽出することもできます。 下記は抽出した.csvファイルです。発話ごとに43種類の感情が0.0~10.0の範囲でスコア化されます。

1発話1レコードのため、1日の入電数や通話時間によりデータ量は異なりますが、抽出したデータがExcelで100万行を超えてしまう可能性が高いです。
たった1日分のデータで100万行を超えてしまう・・・
Excelは動かない・・・

このように、感情データが取得できていてもデータ量が膨大であり、分析するための環境も必要になってきます。

3-4.感情データの複雑さ まとめ

感情データを複雑にしてしまう要因をまとめます。

このような感情の取り扱いの複雑さが、コンタクトセンターで感情解析の活用が進まない理由ではないでしょうか。私たちも感情データの意味を理解する事すらできず、期待した多くの仮説の立証も進まず、とても苦しみました。

3-5.検証の進め方

2020年頃から感情解析を活用した事例を耳にする機会も増え、様々な情報を参考にさせていただき私たちも検証方法を再考しました。
まず、感情解析データの活用方法として、リアルタイムデータとヒストリカルデータのどちらが有効に検証できるのかをまとめました。

上記の比較により、ヒストリカルデータであれば検証できる可能性が高く、オペレータをサポートするために必要な情報が判断できるのではないかと考え、蓄積されたヒストリカルデータを軸に検証を進めることに決めました。

しかし、感情データは43の感情がお客様/オペレータそれぞれに取得ができ、検証するためのデータは様々で分析できるパターンは無限大です。

そのため、オペレータの心を守るためには、どのようなデータが必要なのか?
管理者業務を手助けするためには、どのようなデータが必要なのか?
センター現場で働く管理者と会話を重ね検証する内容(仮説)を決めていきました。

次のコラムでは、私たちが実際に取り組んだ検証内容を具体的にお話しします。


  • 2024年度コンタクトセンターアワード オペレーション部門 部門賞

「感情解析でオペレータの ココロを守るセンター運営」
~感情カルテでフォロー・育成の効率化と 応対評価自動化を実現~

<INDEX>
第1回 感情解析導入の背景と目的
第2回 感情解析技術の特徴とメリット
第3回 感情解析データ検証の難しさ
第4回 SPCCの取り組み事例①
第5回 SPCCの取り組み事例②
第6回 「感情カルテ」の誕生
第7回 感情解析によるセンター現場の変化
第8回 スピンオフ① 感情データの実例紹介~モチベーション編~
第9回 スピンオフ② 感情データの実例紹介~お客様満足度編~

お気軽に
ご質問・ご相談ください

コールセンターや業務BPOで
57億円のコストカットを実現した
プロフェッショナルが解決策をご提案します。
まずはお気軽にご相談ください。