コラム
2025.04.01
私たちが実現したい事は、感情解析でコンタクトセンターにとって本当に必要なデータが取得できるのか?
そして、感情労働に従事するオペレータの心を守り、働きやすい環境を整えることです。
コンタクトセンターの管理者と何度もディスカッションを重ねた結果、以下の3点が最も必要とされるデータでした。
<SPCCのセンター管理者が望む感情データ>
これらが、データで定量的に把握できればコンタクトセンターの管理者(主にスーパーバイザー)は、オペレータを効率的にサポートできそうです。
SPCCのコンタクトセンターでは、1人のSVの下に約10~15名のオペレータが所属し、SVは所属オペレータの育成を行っています。
SVはオペレータのKPIや、直近の様子をヒアリングする目的で、所属オペレータ全員と月に1回程度の面談を実施しており、毎月10~15h程度(業務の10分の1)の時間を費やしています。
しかし、センター現場は入電状況に左右されやすく、面談を計画的に進めることが難しい状況でした。
また、離職を防ぐために重要なSVとのコミュニケーションの場を増やしたいのですが、SVの時間を増やす事は簡単ではありません。
感情データを活用し、気持ちが沈んでいるオペレータを検知できれば「優先的に面談を設定できるのではないか」、また「気持ちが安定しているオペレータとの向き合い方も変えられるのではないか」と考えました。
<取り組み内容>
・感情データ:オペレータの「ポジティブ」「ネガティブ」
・個人の平均値と出勤日の平均を比較
・前日出勤日の感情データが、平均と比較して低下傾向のオペレータとの面談を優先実施
・スコアが安定しているオペレータとの面談時間は短縮実施
※@1h × 4名 = 4h ※①Dさん = 1h
Dさん以外@0.5h × 3名 = 1.5h
合計 = 2.5h
<結果>
アンケート結果:SVに相談したい時に気持ちを伝えられるようになったと回答した方が1.5倍に増加
また、「面談時間が効率化できたため、面談が必要なオペレータとしっかりと会話できた」という声も増えた。
設問_感情解析導入後、SVに相談したい時に気持ちを伝えられるようになりましたか?
オペレータ応対に対するお客様満足度は、コンタクトセンターの窓口として非常に重要な指標です。
また、オペレータの評価や査定に使用されている企業も多いのではないでしょうか。
私たちはお客様満足度を、応対したお客様にショートメッセージをお送りし、メッセージ内のリンクからアンケートにお答えいただく形で取得していましたが、回答率は数%と少なく、ショートメッセージをお送りできないお客様にはヒアリングもできない状況でした。
そこで、感情解析データから、お客様満足度が取得できないか検証を行いました。
<検証方法>
・T-NPS*返信結果が紐づいている通話データを用意(約10万件)
・T-NPS「推奨者」「中立者」「批判者」それぞれの感情データの特徴を確認
・相関が高い感情データを確認
*T-NPS(トランザクショナル-ネットプロモータースコア)とは
特定の顧客との接点(例:購入、サポート対応)直後に顧客満足度を評価する指標です。顧客に「今回の対応を友人や同僚に推薦しますか?」と0-10のスコアで尋ね、その回答に基づいて「推奨者」「中立者」「批判者」に分類します。T-NPSはその取引の評価を即時に得ることで、具体的な改善点を迅速に特定し、顧客体験のリアルタイムなフィードバックを収集するために使われます。
感情解析データによるお客様満足度の取得の検証は、膨大な時間を費やしました。
その検証の一部をご紹介します。
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①T-NPSと相関が高そうな感情の組み合わせを選定
②通話時間を分割する(通話全体/通話を3分割/通話終了付近のみと比較など)
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<結果>
通話終了30秒間のお客様のネガティブ系の感情とT-NPSのかなり高い相関を見つけることができました。
これは通話終了間際の感情と、T-NPSを取得する際の『応対直後にお客様へSMSを送信し回答いただく』流れが、行動心理学のピークエンドの法則にも則っていることを示しています。
そのため、感情データで全応対のT-NPSと近しいスコアを取得できることがわかりました。
また、顧客視点による全件評価は、コンタクトセンター全体の応対評価の課題が改善できると考えています。
オペレータの苦手なお問い合わせを確認する方法はいくつかあると思います。
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・保留が多く、通話時間が長い
・オペレーションミスが多い
・オペレータが苦手意識をもっている
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保留時間や通話時間、オペレーションミスの頻度はこれまでもコンタクトセンター内にあるデータで確認することができましたが、これだけではオペレータの心をサポートすることはできません。
私たちは、オペレータが苦手意識を持っていたとしても各種数値では確認できない、また苦手であることをSVに伝えられないオペレータがいると感じていました。
感情解析データからオペレータの苦手なお問い合わせを可視化することができれば、SVはオペレータに気付きサポートすることや、苦手意識が高いお問い合わせに対する補足研修を準備する、などの判断材料にすることができるため、苦手意識が可視化できないか検証を行いました。
まず、私たちのコンタクトセンターのオペレータが、苦手だとよく耳にするお問い合わせに絞り感情データの特徴を確認したところ、ストレス値が通常の3倍近く高いデータでした。そのため、ストレス値が高いオペレータへ苦手意識を直接確認したところ、非常に高い割合で「苦手」だと確認が取れました。
※キーワード別_ストレス値の平均
この結果を基に、お問い合わせ別にストレス値が高いオペレータに個別の知識補填を行いました。
すると、ストレス値の減少と並行してお客様応対中の保留時間が減少していきました。
今回の検証では、苦手意識の可視化だけでなく、個別に学び直しができる機会を提供できたため学習の効率化にも繋がりました。
<感情解析に望む機能>
SVはこれまで、様々なデータやモニタリング、面談結果などから、オペレータ個々の情報を整理しサポートを行っていました。
この作業は、当たり前ではなくそれぞれのSVの時間や努力の上で成り立っています。
この時間をかけて集約していたデータが、感情解析データから得ることができれば、SVはこれまで以上にオペレータと向き合うことができ、心のサポートや育成がスムーズに行えるのではないでしょうか。
やはり、感情解析データを活用することはコンタクトセンターを運営していくなかで重要な役割を担うと確信が持てました。
「感情解析でオペレータの ココロを守るセンター運営」
~感情カルテでフォロー・育成の効率化と 応対評価自動化を実現~
<INDEX>
第1回 感情解析導入の背景と目的
第2回 感情解析技術の特徴とメリット
第3回 感情解析データ検証の難しさ
第4回 SPCCの取り組み事例①
第5回 SPCCの取り組み事例②
第6回 「感情カルテ」の誕生
第7回 感情解析によるセンター現場の変化
第8回 スピンオフ① 感情データの実例紹介~モチベーション編~
第9回 スピンオフ② 感情データの実例紹介~お客様満足度編~
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