コラム
2025.04.01
いざ検証を進めるには、オペレータの協力は必須です。
しかし、感情データを取得されるオペレータにとっては決して気持ちが良いものではありません。
また、感情データの無断取得はプライバシー侵害に該当する可能性もあります。私たちは、利用目的の明確化とオペレータの同意を得るところから始めました。
・利用目的の明確化
利用目的を「オペレータのココロを守り、成長をサポートするため」と定め共有しました。
まずは、オペレータに感情データの取得目的を伝え、次にリアルタイムの感情解析データを使用し、2つの機能を画面に表示しました。
※ネーミングはSPCCの独自名称です
①ココロの体温計 →オペレータのポジティブ/ネガティブの感情の変化が表示される
②ココロのお守り →お客様が現在「安心・納得」されているかどうか表示される
表示されるデータの信憑性は確かなものではありません。あくまで感情データがどのように動くものなのか視覚的に感じてもらいます。
この表示は、オペレータが任意で「ON/OFF」の切り替えが可能な設定をしていましたが、期間中に利用を継続したオペレータは94%と、非常に高い利用率を示していたため、使用目的に対してポジティブに捉えてもらえた印象です。
・オペレータの同意
その後、オペレータの同意を確認するため全オペレータにアンケートを取得したところ、
想定以上に肯定的な意見が多く、驚きました。
この回答の裏には、「ココロを守って欲しい」「確実にサポートして欲しい」という、コンタクトセンターのオペレータの気持ちが潜んでいることを感じ、「まだまだ応えることができていなかった」という反省の気持ちになりました。また「問題がある」と否定的だったオペレータには個別に説明を行いフォローしました。
このように、利用目的を明確化し伝え、実際の感情データに触れオペレータの同意を得ることにより、プライバシー侵害になってしまう懸念を拭い去り、検証のスタートラインに立つことができました。
続いて、コンタクトセンターの管理者に対して感情解析データに対する理解を深める取り組みについてもご紹介します。
・感情解析データを用いたオリエンテーション
センター現場の管理者を集め、感情データの動きを体験してもらうゲーム感覚の取り組みです。
AmiVoice®Communication Suitを利用して会話の感情データが取得できる環境で、質問を投げかけ回答時の感情を考察しました。
<質問例>
質問:「最近の嬉しかったことや、悲しかった出来事をおしえてください」
こちらの例では、少し嫌味な聞き方をされると「不快」の感情が高まりました!
何気ない会話の中でも、感情データは変化します。参加者は、感情がデータで表現される楽しさや納得感を感じ、本人へ実際に感じていることを確認することで、感情データに対する理解が少しずつ深まりました。
・感情解析データによる自動アラート機能の活用
特定の感情データに一定の閾値を設け、お客様/オペレータそれぞれの感情を自動でセンターの管理者であるスーパーバイザー(以下SV)へ知らせる取り組みです。
<設定した感情>
お客様/オペレータの「恐怖」「怒り」「喜び」
これらの感情は、クレームやカスタマーハラスメント入電の検知、不適切な応対の予防に効果的な可能性があると仮定しました。
しかし、お客様の怒りアラートに駆け付けたSVからは、「すぐにモニタリングしましたが、お客様は怒っておらず通常の会話でした」とフィードバックをもらうことが、しばしばありました。
その理由は、人は誰しも「怒り」の感情が湧いても、理性が働きすぐに怒りを表現する訳ではないからです。
あくまで”気持ち”が怒りの状態であり、怒りをオペレータにぶつけているわけではありません。
そのため、お客様に「怒り」の感情が芽生えたタイミングを知らせるアラートとSVに伝え、検証を続けて行きました。
取り組み前後のオペレータアンケートの変化はコチラです。
この結果は、オペレータの目に見えないSOSにSVが気付ける機会が増えたことを指していると思います。そして、複数のオペレータを同時にサポートするSVの業務サポートに繋がる可能性も高まりました。
●感情解析データによるトークスクリプトの文言分析
リアルタイムの感情解析データから、一人ひとりのお客様との会話内容を変化させることは、非常に難しいですが、お客様をいくつかのパターンに分類し、対応を変化させることはできるかもしれない、と仮説を立てました。
しかし、お電話いただいた数分間の感情データでお客様を分類してしまうことは、間違えてしまう可能性が高いのではないかという懸念と、オペレータの心の負担が大きく私たちが実現したい「オペレータの心を守りたい」という目的とも異なりました。
検討の結果、お客様応対で使用するトークスクリプトのABテストに、感情解析データを活かせる可能性が高いと考え、取り組みを行いました。
<例)解約抑止トークスクリプト内の、解約理由ヒアリング文言のABテスト>
検証の結果、Bパターンでヒアリングした場合、お客様の「喜び」の感情データがAパターンの約4倍近く高い結果が得られました。そして、すべてのオペレータが使用するトークスクリプトの文言を変更した解約抑止の結果がこちらです。
お客様の「喜び」が約4倍高いBパターンの場合、お客様が解約理由を仰ってくださる機会が増えたため、解約理由が明確になり「解約抑止に繋がる的を射た提案」が増加し、解約抑止率も向上しました。
これら3つの取り組みを通して、センターで働いているSVやオペレータの感情データに対する理解を深めることに成功したと感じています。そして同時に期待を高めることができたと思います。
次のコラムでは、コンタクトセンターのSVをサポートする取り組みについてお話しします。
「感情解析でオペレータの ココロを守るセンター運営」
~感情カルテでフォロー・育成の効率化と 応対評価自動化を実現~
<INDEX>
第1回 感情解析導入の背景と目的
第2回 感情解析技術の特徴とメリット
第3回 感情解析データ検証の難しさ
第4回 SPCCの取り組み事例①
第5回 SPCCの取り組み事例②
第6回 「感情カルテ」の誕生
第7回 感情解析によるセンター現場の変化
第8回 スピンオフ① 感情データの実例紹介~モチベーション編~
第9回 スピンオフ② 感情データの実例紹介~お客様満足度編~
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