コラム
2023.07.03
コンサルを行うための「引き出し」が仕上がっても、お客様との有意義な対話に至るまでにはまだハードルがあります。
コンタクトセンターアワードでは、お客様応対における会話力向上のポイントを、以下のようにご紹介しました。
先のコラムで、活動の浸透には具体的な目標設定が必要だ、と申し上げましたが、上記のポイントは、数値化が難しいものばかりです。
そのため、会話力の向上を目指す上では、身近にオペレーターの「目標となる人」を配置できるかどうかが鍵だと考えています。
オペレーターにとって会社内で一番身近な存在は、自身の管理者とオペレーター仲間です。ですので、オペレーターが上記のような会話力のポイントを意識できるようになるためには、管理者が見本を見せてあげるのが一番近道です。先ほどのポイントの主語を管理者に置き換えると、以下のようになります。
ただ、そうは言っても、コンタクトセンター運営において管理者は常に忙しく、1人1人のオペレーターに心を配れる時間は限られます。
そこで弊社では、以下のような場面で、管理者からオペレーターへ、会話力のポイントを伝授するようにしています。
弊社では、解約コンサルの受付前に、オペレーター向けの研修を用意しています。この研修で最も重視しているのが、お客様のお話に対して、受け止め・共感をしっかり行うことです。
先ほどのポイントで言うと、この部分です。
研修では、以下のような具体例を挙げて、ロールプレイングをしながら、目標とする受け止め・共感トークを学んでもらいます。
この具体例で伝えたいことは、オペレーターの質問に対し、お客様が何か答えて下さった場合には、とにかく「すぐに」「ややオーバーめな」反応を返すべし、ということです。
オペレーターがそっけない返しをしてしまうと、お客様は(答えて損した)と思ってしまうので、本当に大事なポイントです。
しかしながら、この反応をオペレーターにお願いしても、研修で触れるだけでは、まずやってくれません。これを実践するには、どうしても恥ずかしさがハードルになってしまうからです。
そのため、この研修を行う際には、まず管理者がオペレーターへの返しにおいて、見本を見せることにしています。
具体的には、ロールプレイングなどで、オペレーターがお客様役の回答に対してすぐに何らかの反応を返せた時に、管理者が自ら、「すぐに」「ややオーバーめに」オペレーターを褒める、ということです。
受け止め・共感をするのは恥ずかしい、と尻込みしているオペレーターも、すぐにオーバーめな賞賛が返ってくると、(これで良かったんだ)と安心してくれますし、この反応をされると嬉しいな、ということを、実感してくれます。
自分がされて嬉しいことなら、お客様に実践する際の抵抗も薄れますよね。
研修以外では、オペレーターと管理者を含む座談会という形で、お互いに情報共有ができる場を設けています。
座談会のテーマは様々ですが、弊社で開催したものを1つご紹介します。
管理者とベテランオペレーター、新人オペレーター複数人による座談会
この座談会の目的は、新人オペレーターがベテランオペレーターからスキルを習得することです。
研修では教えていない応対のコツ、言い換えればベテラン本人が練り上げた「引き出し」の中身を、研修の堅苦しさを感じることなく、自然に新人に伝授することができます。
弊社では、まず新人に「これで良かったんだろうか」「もっと良い応対があったのでは」と漠然と疑問に思っていることを持ち寄ってもらい、それに対してベテランが自分流の応対を披露する、という形で座談会を開催しています。
ここで新人は、以下の会話力のポイントをお客様側として実体験することができ、オペレーター側としての応対に生かせるようになります。
また、この座談会は、ベテランオペレーター側から見ても、自分の「引き出し」が人の役に立つことを実感でき、今までの自身の頑張りに手ごたえを感じられる時間になります。
最後に、SPCCでのオペレーター育成の失敗談と、そこから得られた嬉しい発見について、ご紹介したいと思います。
コンタクトセンター運営の効率化が叫ばれる中、弊社でも、やや思い切ったトライアルを行ったことがありました。
内容は、オペレーターが応対に困った際に使える、ベテランオペレーターへの質疑転送ダイヤルを設ける、というものです。
通常、オペレーターからの質疑には管理者が対応しますが、多忙で待たせてしまうこともあるため、ベテランオペレーターが管理者の役割を一部担ってくれるのであれば良さそうな案だと、立案時点では思っていました。
しかし、実際にトライアルを行い、オペレーターに所感をヒアリングしたところ、厳しい意見が寄せられました。
中でも以下の意見を目にした際に、私は、このやり方にはオペレーター個人に向ける目線が不足していた、と気付かされました。
「私たちオペレーターが行っているのは、一問一答の応対ではありません。 100人お客様がいれば、100通りの質問の仕方があります。 私たちは、それらにスムーズにお答えして、お客様にご満足いただけるように、日々の1本1本の通話を経験にして、ステップアップを目指しています。 このやり方では、新人も、ベテランである私たちにとっても、成長の機会がありません」 |
通常、弊社では、お客様からのご質問をオペレーターが自分で解決できない場合、通話を保留にして管理者に質問します。そこで得た回答を、オペレーター自身がお客様にご案内するので、応対を重ねるたびに、オペレーターの中の知識・経験の「引き出し」は育ってゆきます。
一方、先ほどお話しした質疑転送トライアルは、お客様から質問されたオペレーターが、「自分には分からない」と思ったら、すぐにベテランオペレーターに通話ごと転送できる仕組みです。
この場合、お客様のご質問は転送先のベテランオペレーターが解決してくれますが、転送元のオペレーターには正解が分からず、「引き出し」は育ちません。
また、転送を受けるベテランオペレーターも、転送元から申し送られた質問への回答をお客様に伝えるだけの応対になることが多く、せっかくのお電話が、お客様の第一声からご要望を察し、的を射たスムーズな応対をするための、経験を磨く機会になりません。
オペレーターから上がった厳しい意見は、これらを分かった上で、効率ばかりにとらわれず、自分たちに成長の機会を与えてほしい、という声でした。
この声を聞いて、弊社が対話のための「引き出し」づくりにおいて重視している知識・経験の積み重ねを、誰よりもオペレーター自身が意識してくれていたのだ、ということに、改めて気付きました。
同時に、そんなオペレーターを束ねる会社・管理者側に求められる視点は、今ある人財の範囲でひたすらに効率アップを求めるものではなく、全オペレーターのベーシックなスキルの成長を後押しし、時を重ねるごとに、より良い応対ができるようになるコンタクトセンターを作ってゆくことだと、再認識しました。
先にご紹介したトライアルの例に限らず、コンタクトセンター運営に携わっていると、ともすればオペレーターのことを、人数・スキル・KPI・稼働時間…などの「数値」で見てしまいそうになることがあります。
ですが、オペレーターがお客様1人1人に親身に向き合うためには、会社・管理者・先輩・同僚オペレーターなどの仲間同士が、1対1で親身に向き合っている必要があります。
その理由は、「SPCCの会話力研修」で触れた通り、オペレーターにとって身近な仲間が、オペレーターの見本になるからです。
今後、お客様応対のデジタル化・自動化は一層進んでゆくと考えています。
そんな中で、今までは当たり前だと思っていた「人ならではの価値」もまた、前向きに見直される時が来ているのではないでしょうか。
弊社で解約コンサルを始めたばかりの頃、一部のオペレーターからはコンサルに懐疑的な声も聞こえてきました。
とにかく素早い応対がベストであって、それ以上の情報はお客様にとって余計なのではないか、という懸念です。
ですが、実際にやってみると、「知らなかったことを教えてもらえた!ありがとう」というお客様の感謝の声が、オペレーターの「やってみてよかった!」「お客様のためになっているんだ」という納得に繋がってゆきました。
お客様と1対1で対話ができるオペレーターの育成には、終わりがありません。
ですが、効率化により見逃されてしまうお客様の隠れたニーズを、オペレーターが察し、拾い上げて、自社サービスを充分にお楽しみいただけるようサポートすることは、お客様と会社との良好な関係構築において、絶大なちからを発揮してくれます。
そしてそれだけでなく、オペレーター自身のやりがいも高めてくれます。
オペレーターの会話力育成において大事なのは、まず管理者が見本になること。
オペレーター同士の交流で会話力を育むこともできる。
オペレーターを「数値」で見ない。いち個人として接する。その態度は、お客様に還元される。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!このコラムが読んで下さる皆さまにとって、少しでも参考になれば幸いです。
●コンタクトセンターアワード2022オペレーション部門賞
『お客様への1対1のコンサルによる解約抑止』
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