コラム
2023.06.14
こんにちは! スカパー・カスタマーリレーションズCXデザイン部の戸井田です。
このコラムでは、コンタクトセンターアワード2022でオペレーション 部門賞を受賞した取り組みについて、お話しします。
コンタクトセンターアワード2022では、弊社で行っている「お客様への1対1のコンサルによる解約抑止」について取り上げました。
会社の利益のために、解約するお客様を引き留めたい。
けれども、既に解約を決めてしまったお客様の心を動かすのは難しく、多くの場合、お客様に嫌がられてしまうので、オペレーターも本心では引き留めなんてしたくない。
この難題について、弊社では、こんな解決策を取り入れました。
お客様が解約したいとおっしゃるなら、引き留めず、スムーズにお手続きをする。けれども、サービスの魅力を知らないまま解約に至ってしまわないよう、ご契約直後から、お客様お1人お1人に、サービスの楽しみ方をご案内する。
オペレーターは前向きな情報提供だけをすれば良く、お客様にも喜んでいただける、というものです。
この取り組みの結果、
早期解約は年間平均で10%以上減り、一度解約したお客様の再加入率は、年間平均で10%以上増えました。
このことは、従来よりもお客様にサービスの魅力が伝わったことを示していると考えています。
また、オペレーターにはコンサルマインドが根付き、解約受付以外のお電話でも、お客様お1人お1人に合った提案ができるようになってきました。
とはいえ、これだけ読むと、「言うのは簡単だけど、実際には難しいんでしょう?」というのが第一印象ですよね。 きっと、このコラムを読んで下さっている皆さまは、以下のような疑問をお持ちかと思います。
『お客様への1対1のコンサルによる解約抑止』
このコラムでは、これら3つのテーマについて、弊社で実践していることをご紹介しようと思います。
皆さまのご想像通り、「お客様への1対1のコンサル」は、簡単には実践できないサービスです。
コンタクトセンターのオペレーターの中には、お客様に依頼された用件だけをミスなく処理するのが自分の仕事、と考えている方もいらっしゃいます。
弊社にはかねてからお客様との対話に重きを置いてきた歴史があるため、ベテランオペレーターの一部はコンサルの実践にさほど抵抗がありませんでしたが、実際のところは両者が混在している状況でした。
そこで、オペレーターにコンサルを実践してもらうには、「なぜやるのか」のマインドセットと、モチベーションを下げない数値目標設定の2つが必要だと考えました。
解約の入電で「お客様への1対1のコンサル」を行う目的は、明け透けに言ってしまえば、会社の利益のために、解約するお客様を引き留めることです。
ですが、コンサルを始める前と後では、その背景にあるマインドが変わりました。 コンサルを始める前の解約抑止活動では、料金が割引になるキャンペーンなどをご紹介し、できるだけ解約を先延ばしにする、というマインドが主流でした。
お客様は辞めたいとおっしゃっているのに、今ならお得です!と言って引き留めるわけですから、お客様からの反応は芳しくなく、オペレーターにとっても気の進まない応対でした。
また、解約受付時には「解約理由」を伺っていますが、ヒアリングの目的がコールフロントシステムの必須入力事項を埋めることになっており、「対話のきっかけ」としては活用されていませんでした。
そこで、解約入電でのコンサル(以降、解約コンサル)を行うにあたっては、
という流れを徹底することにしました。
なんとかして今月の解約を思い留まってもらう、というマインドではなく、解約原因の解決を試みる、というマインドへ、意識を変えました。
しかし、これに対しても、一部のオペレーターから、「お客様は解約したいとおっしゃっているのだから、引き留めずに受け付けてあげたい」という声が上がりました。
①で伺った解約理由に対して②で解決策を提示するのが解約コンサルですから、引き留めではありません。 なぜオペレーターに主旨が伝わらなかったかというと、原因は、オペレーターが弊社のサービスを熟知していることにありました。
サービスに精通したオペレーターは、お客様も自分と同じように、「サービスのことをよく知っていて、その上で解約しようとしている」と思い込んでしまうことがあったのです。
ですが実際には、お客様はキャンペーンなどで露出の多い目玉商品の存在しか知らず、本当はもっと安価なプランがあるのに、自分には少し高いな、と思って解約してしまう、ということがよくあります。
そこで、オペレーターには、「引き留める必要はない。お客様が解約するかどうかを判断するための情報を提供しよう」と伝えました。
解約コンサルとは、お客様のための有益な情報提供。
これが、SPCCで行った「なぜコンサルをするのか」のマインドセットの骨子です。
新たに始める活動を浸透させるには、具体的な目標設定が必要です。 弊社では、解約コンサルの数値目標を「提案率」と「継続率」の2つで示すことにしました。
提案率 | 解約入電のうち、お客様に何らかの 情報提供をした割合 提案をした通話件数÷解約通話件数 |
---|---|
継続率 | 解約入電のうち、お客様が 契約を継続して下さった割合 継続契約となった通話件数÷解約通話件数 |
会社の利益に直結するのは継続率ですが、元々解約をしたくてお電話して下さったお客様ですから、情報提供によって契約継続に転じて下さることは少なく、継続率は非常に低い数値になります。
最初から低い数字を追い求めて、オペレーターがやる気を失ってしまっては元も子もないので、まずは継続率にはあまりフォーカスせず、提案率を上げるところから始めました。
解約コンサルとはお客様のための有益な情報提供ですから、「結果はともかく、まずはやってみよう!」というメッセージです。
情報提供をしてみて、お客様に感謝されたら、仮に契約継続には至らなくとも、それがオペレーターのモチベーションに繋がります。 こうして情報提供を続けるうちに、お客様ごとにどんな情報が有益なのかを把握するオペレーターが増えてゆき、提案率にけん引される形で、継続率も上がってゆきました。
SPCCの解約コンサルにおける継続率は、コンサル開始当初の1.8倍ほどまで上がってきています。
お客様への1対1のコンサルによる解約抑止で、 早期解約の減少・再加入の増加の両方で結果が出た。
オペレーターにコンサルを実践してもらうには、 以下の3つが必要。
1.まず、やる気になってもらうには、以下の2つが必要。
①「なぜやるのか」のマインドセット
②数値目標の設定
次回は、「オペレーターはコンサルスキルをどうやって習得したのか ~知識・経験編~」 について、お話しします。
●コンタクトセンターアワード2022オペレーション部門賞
『お客様への1対1のコンサルによる解約抑止』
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